2008年5月4日日曜日

動かない歩道(2002年3月)


動かない歩道1


動かない歩道2


歩道の主張

工学院大学電気電子情報同窓会HPから転載
http://www2.kogakuin.or.jp/denki/denki_old/ 

 歩道は動かなくて当たり前です.しかし…….
 電気ひげ剃りや洗濯機,自動車,電車,エレベータ,エスカレータなどがもし動かなかったら,それは通常の状況でないことを意味します.本来,歩道は動かなくて当たり前だったのですが,最近,空港や大きな駅の構内等に動く歩道を見かけるようになり,「動かない歩道」とは,故障して動かなくなったり,あるいは動かない時間帯の「動く歩道」を意味するようになりました.
 初めて動く歩道を利用したとき,何か得をしたような感動がありました.しかし人の性とは欲張りなもので,毎日動く歩道を利用するとそのときの感動は薄れ,動く歩道がそこにあるのが当たり前になってしまいます.そして動かない時間帯に出会うと,つい腹立たしくなってしまします. 人が速やかに現状に慣れて,現状と比較してものを感じるのは素晴らしい能力です.これが正常に機能していれば,破格の幸せが不意に訪れても平衡感覚を失わずに生活でき,また失意のどん底にあっても直ぐに希望を見いだして努力することができるのです.しかし余りに急激で,かつ大きすぎる落差に適応するのは,なかなか難しいようです. 平日の朝の9時前や,土曜日などに,止まっている「動く歩道」の脇を大勢の人が歩いているのを見ると,私は腹立たしくなって,この施設の管理に問題があるのではないかと,つい考えてしまいます.サービス部門は現在の体制で何ができるかを考えるのではなく,どうすれば必要なサービスを実行できるかを考えるべきだとか,そのために何にも増して,先ず顧客の実体を把握し,顧客のニーズを知ることだとか….しかし教職に就いている自分に振り替ってみると,大学の対応にはまだまだ努力が必要ではないか反省させられてしまうのです. 誤解をしないで頂きたいのですが,私は決して文句を言いたいのではありません.兎に角,動かない歩道は様々なことを考えさせ,深い思索に私たちを導いてくれます.また歩くことは体に良いのです.それらのことに感謝こそすれ,決して恨むべきではないと考えているのです.
 JRの新宿駅西口から京王プラザホテルまでの地下道にこの「動く歩道」が設置されたのは約5年程前だったかと思います.その当時はホームレスを追い出すために計画したのではないかと批判されたこともありました. 朝この歩道を利用していますと,女性の優しい声で「乗り降りの祭は足下にお気をつけて下さい.」と「"Pleas, watch your step!" 」のアナウンスが小さな音で聞こえてきます.うっとりとしていると突然,男性の大きな声で「こちらは新宿警察署です.この地下道は大切な……」というアナウンスに驚かされます.アナウンスの訓練を受けた人の声ではありますが,突然警察署といわれてビックリさせられ,眠気を覚ましてくれるのです.しかしたまに,普通のオッサンのダミ声で「こちらは東京都○○建設事務所です云々……」とアナウンスをされると,「何だ!この場違いな声は!」と呆れさせられることもありますが,それもまた愉快ではありませんか.

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